書評/扉の外
応募当時のタイトル、「もしも人工知能が世界を支配していた場合のシミュレーションケース1」そのままの内容でした。クラスメートが8の部屋に分かれて、ダイヤカード(実質お金)を賭けて戦略ゲームに興じるお話です。
特殊な状況下に置かれた人間の行動がリアルに描かれており、興味深い内容に仕上がっていました。序盤から主人公を始めクラスが部屋に閉じ込められており、現在地や状況も信じるに足る要素が少ないため、世界がどういった状況にあるのか気になり、すらすら読み進められました。
世界観や人々の状況の推移が、興味深い。他色の陣地を徐々に支配してカードの供給を得ながらも、クラスの状況が好転しないもどかしさにイライラを募らせるクラスメートの姿を始め、深いリアリティが感じられました。そのおかげで、終盤まで退屈することなく楽しめました。
.
悪い点
欠点というかは、人によるかもしれませんが……。
言葉が悪いんですが、主人公・紀之の思考回路には、虫唾が走りましたね。自らの信念に従っているようで、結局のところ状況に流されているだけのように、私の目には映りました。世の中を斜に構えて眺めて皮肉る彼の態度には、共感しかねます。同じく、蒼井も好きになれそうにありません。
おそらく主人公を許容できるか否かで、好みが分かれる作品でしょうね。
.
総評
興味深いお話でした。
ダークな青春物語としては、なかなか丁寧に作られたお話でした。共感は全くできませんでしたが、状況の推移のリアリティ溢れる描かれ方は、読み応えたっぷり。
クセが非常に強いですが、将来性は感じました。アクの強ささえ薄めれば、もっと幅広く受け入れられる作品を書ける作家な気がします。
次作辺りは期待かな。
| 固定リンク

















コメント